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重力波とは

重力波とは
 重力波、それは光速で伝わる時空のさざ波です。これは1916年にアインシュタインが発表した一般相対性理論から予言される波で、その存在は1980年代にハルスとテイラーらにより間接的に証明されています。彼らは中性子星連星PSR1913+16の軌道を10年以上にわたり観測することで、その距離が重力波の放出によって徐々に近づいていくことを発見しました。この業績により彼らはノーベル物理学賞を受賞しました。

 そして2015年9月、アメリカの重力波検出器LIGOによって、ついに重力波の直接検出がなされました。これは、ブラックホールの衝突から発生する重力波を捉えたもので、重力波天文学の幕開けを告げるものです。
 重力波の波源方向を特定し、さらに多くの物理学的、天文学的情報を引き出すには、3台目、4台目の重力波検出器稼働が不可欠です。重力波天文学は今まさに始まったところであり、今後の大きな発展が期待されています。

重力波の発生源
 重力波は質量を持った物体が加速度運動することで放射されます。しかし観測できるほどの大きな振幅の重力波を発生させるには、高密度で非常に大きな質量の物体が加速度運動する必要があります。したがって重力波の発生源としては以下のような天体運動、天体現象が挙げられます。

  • コンパクト連星(中性子星やブラックホール、白色矮星など)の公転
  • コンパクト連星の衝突合体
  • 中性子星の自転
  • 初期宇宙からの重力波
  • 超新星爆発
これらの波形を観測することで、一般相対論の検証をするとともに天文学に貢献することができます。

中性子星を中心に持つかに星雲
(すばる望遠鏡 / 国立天文台提供)

ブラックホール連星のイメージ図


重力波の検出
 重力波の検出実験はウェーバーらのチームが共鳴型検出器を作製した1960年代からスタートしました。現在はレーザー干渉計型検出器が主流となっています。

 重力波は自由質量に対してその固有距離を変化させる性質があります。そこでレーザー干渉計型検出器ではこの性質をたくみに利用し、レーザーを使い鏡までの固有距離を測定します。このとき鏡は自由質量でなければならないため、ワイヤーを使って振り子のように吊られている必要があります。

 レーザー干渉計の基本となるのはマイケルソン干渉計です。マイケルソン干渉計はビームスプリッターでレーザーをL字にわけ、再びビームスプリッターに戻ってきたレーザーを干渉させる装置です。ビームスプリッターの一方に置かれた光検出器上では干渉縞が表れます。干渉計に重力波が到来すると一方の腕の光路長が伸び、もう一方が縮むため、干渉縞の明暗が変化します。よって、この明暗を観測することで重力波が検出できます。

 また、この他にも、パルサーからの信号のタイミングを測定することで重力波を検出するパルサータイミング法などの検出法もあります。

重力波に対する自由質量の応答
マイケルソン干渉計の概略図

地上干渉計重力波検出器
 現在地上検出器で主流となっているのはレーザー干渉計です。レーザー干渉計は基本的には腕を伸ばすほど重力波に対する感度が上がるため、なるべく大きな装置を建設することが要求されます。

 国立天文台には基線長(腕の長さ)300mのレーザー干渉計TAMA300が設置されています。TAMA300は世界の大型干渉計計画に先がけて、1999年に観測を始めました。当時の世界最高感度や初の長期観測などを成し遂げました。日本ではこの他に基線長100mのCLIO検出器も稼働しており基線長3kmを持つ次世代計画LCGTのための技術開発・研究を行っています。海外ではGEO600, VIRGO,LIGOなどが稼働しています。
⇒TAMA300の解説 ⇒CLIO検出器の解説 ⇒LCGT計画の解説
GEO600 / VIRGO / LIGO へのリンク

TAMA300センタールーム
ワイヤーで懸架された鏡

宇宙干渉計重力波検出器
 地上のレーザー干渉計で用いる鏡は振り子の特性のため低い周波数の重力波に対しては自由質量でなくなります。したがって低い周波数の重力波の検出は苦手です。そこで、低周波でも自由質量となる鏡を実現するために、鏡を衛星軌道にのせて無重力状態にすることが考案されました。現在われわれ国立天文台を始めとする研究グループはDECIGOと呼ばれる宇宙空間用検出器の開発にも着手しています。海外ではNASAとESAが共同でLISAと呼ばれる宇宙重力波検出器プロジェクトを推進しています。
⇒DECIGOの解説
LISA@NASA / LISA@ESA へのリンク

重力波プロジェクト推進室 / 連絡先: gw-webmaster@  @の後にnao.ac.jpを追加してください。 最終更新 2016/02/26